曼珠沙華








さっきまでオレの前で笑っていたアイツは今はもう笑わない。


笑えない。


なぁ、幸村・・・


死ぬってなんだよ?









「さぁ、ここが大詰めだよ。気合い入れて行こう。」

『真田家』の家紋を背中に纏、彼は一歩踏み出す。


―――夏の陣―――


オレ達は未来、天下を真田幸村のものにするために剣を振るい、人を薙ぎ倒 していた。


思った通り敵の力は強く、正直苦戦を生じられている。
その中でも幸村は、オレ達に心配かけまいと笑顔を崩す事は無い。
だが、彼なりの優しさがオレにはとても辛かった。



恋仲であるオレにだからこそ、不安や恐怖等を打ち明けて欲しかった。
もうこの際は正直、天下なんてどうでも良かった。幸村さえ、無事だったら何でも良 い。
仲間の死や、自分の死だって気にしない。
幸村が傷つかないなら、血を流さないなら・・。



「みんな、絶対死ぬな。」

「御意・・・―――。」



『御意』
オレはこの言葉を本気で言った事は無い。オレの命を投げ捨てても、アイツ を守りたい。


何もない。空っぽなオレに優しさや生きる楽しさをたくさん教えてくれたのは、幸村 だった・・・。




アイツの為なら、何でも出来る。そんな気がしてならない。



アイツはオレの太陽だ。なくてはオレは生きてはいけない。


絶対的な存在―――




「幸村・・・。」

「何だい?サスケ。」


お願いだから・・
お前だけは・・・

「お前が絶対死ぬな。」

アイツは真っ直ぐな鋭く光る瞳はオレを射ぬく。


「・・うん。サスケ、絶対幸せな世界を作ろうね。」


「あぁ・・。」



必ず、お前を天下人にしてやる。



必ず・・・・・――




≫≫≫



戦陣で刀を降り回す幸村が通った後には人の屍の山が出来た。
四方に散らばる十勇士の中でオレは幸村の隣に離れない様に刀を振るう。
アイツを守る為に・・・。


だが、一瞬自分が倒した屍に足を取られて体制を崩してしまった。その隙に薄笑いを 浮かべた敵の将軍の刀がオレの頭上で光を放つ。
オレは避けられなくて、その時に自分の一生がここで閉じる事を確信した。心残りは 唯一人・・・。
あいつを最後まで守れない事が。でもオレが居なくてもオレの代わり忍はたくさん居る。
ゆっくり瞳を閉じた。頭に浮かぶアイツの微笑み、最後に幸村の笑顔を見たかった。


幸村、オレが死んでも泣くなよ?
お前は世界を束ねる、真田家の希望の光なんだから・・・。
オレ如きに足なんか取られるな、オレを置いて行け。
敵を切ったら、迷う事無く、前に進め。


「サスケェ――ッ!!」


耳元に風を切る音が近待った時、それを遮る様に幸村の叫び声が戦場に木霊する。

「・・・?」

敵に切られて、凄く痛いはずなのに、オレの体は傷が無い。
なのに、体には血の生暖かさを感じる。

どうしてだろう?
ハッと顔を上げるとオレの前に立ちはだかる幸村の体から、無数の真っ赤の血の花を 散らしてその身体は倒れた。

オレの体に付く血は

誰のもの?



「幸村ぁぁ!!」

オレはその場に座れ込んで幸村に泣きつく。幸村の胸からは止まらない程の血が流 れ、口からも苦しそうに血を吐いた。

「・・・サ・・スケ。ハ、ハハ・・、嫌だな泣かないでよ。ボクが死ぬみたいじゃない。」

「ゆ、きむら・・・。」

目から涙をこぼすオレの頬に血に濡れた手を寄せて指で涙を拭き取る。力無いその手を握って余計に涙はこぼれた。 頬に残る血はまだ熱を保っている。

「し、死なねぇよ。だから、もうしゃべんなっ!!」

「・・・見てサスケ、空が青い・・よ。こんな日にボク達何して・・んだろ・・・ね・・?」


消えゆく言葉を残して幸村は瞳を閉じ、ゆっくりと息を引き取った。
閉じた瞼からは、一粒の涙が頬を滑り落ていく。

「・・幸村?幸村っ!!」

幸村の身体を揺すっても、何もしてももう目を覚ます事は無かった。
もう、彼の冗談も、頬笑みも自分を好きだと言ってくれる彼はいない。

もう、オレには笑いかけてはくれない。



『サスケ、大好きだよvずっと、すっと何時までも一緒だよ。』



もう、オレの名前を呼んではくれない。





そう思うと、憎しみと悲しみで全身が支配され、無償に涙が零れる。

「ゆ・・きむら・・・?あ、・・あぁッ!!!幸村ぁぁぁ!!!――」



サスケの悲鳴にも似た叫び声と共に、辺りはどす黒い雷雲が立ちこめて轟音が鳴り響き、雷が戦場全体に落ちていく。
その雷はサスケの怒りや悲しみを表す様に、敵も味方も無差別に姿を焼き払っていった。
戦場には肉片一つ無い綺麗な草原に戻り、戦場には二人以外の人影すら無くなっていた。
そして、雨が降り出して物言わぬ幸村とサスケの体を無常にも激しく打ちつける。

「幸村・・・。見ろよ、オレ達の勝ちだぜ?真田が天下を取ったんだ!!なぁ、目を開けろよ。幸村ッ!!オレを、一人にしないって言っただろぉ!」

血に塗れた亡骸に泣きついて、その衣を強く、固く握り締めた。


「ゆッ・・きむらぁ・・・。」
嗚咽共に出されるサスケの声は激しい雨にかき消された。


冷たくなった幸村の頬にそっと手を寄せて、その唇に優しく口づけした。




お前が居ないこんな世界なんていらない。
お前を殺した世界なんれ壊れてしまえばいい。

もう、ここに居る必要はない。だから、オレは行くよ。
お前の側へ・・・――



「今、側に行くから・・・。」


ゆっくりと立ち上がったサスケは、幸村の刀を手から取って、自分の腹に近づけて涙に濡れた瞳を閉じて一気に突き刺す。
刀は肉を貫いて、空を切る。
一気に刀を引き抜くとドバッと血が吹き出し、同時に口からも血が吐き出る。
体は自体を支える事が出来ず、膝を付いて地に倒れた。
雨はさらに激しくなって、二人を打ちつける。
まるで、二人の薄汚れた血を流すように・・・。



「ゆ・・・きむ・・ら・・・・。」




倒れこんだ自体は一気に力を無くし、サスケはよろよろと手を幸村の手に添えて瞳を閉じる。
虚ろに呟いた言葉は雨によってかき消された。



冷たい・・・。こんなにも幸村の手は冷たかっただろうか・・・?


あの温かい手で抱き締められる事も無いのかと思うと、さらに涙が零れ出す。

お前が居るなら、死ぬのもいいんじゃないのかと思った。



そして、彼もまたゆっくりと息を引き取る。


雨は一層強さを増して、二人を体を打ち付けていく。




曼珠沙華の様に二人の周りに散らばった血の花も雨に寄って流されて消えて行く。



悲しい思い出――




その後、徳川家康も恐れたと言う知将真田幸村と彼の真田十勇士最強の忍、猿飛サスケの姿を見る者は居なかった。
後日に偵察に見たものによると、死体はおろか肉片一つ無かったと言う。

当然、真田幸村と猿飛サスケの遺体は見付かっていない。
















――To becontinued――









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はい。後書きです。
えぇ、グロくてすいません!!!
幸村さんの命日記念に書きましたv(記念なのか?)
後書きです。速攻書いたので疲れました。一時間かかりましたυ
この話は、学校で日本史の先生にサスケは幸村が後を追ったと聞いて凄く書きたかった話です。
この後に転生話や天国でのハッピーエンドがあったんです!!
今、マガで配信中なので出来上がったらUPしたいと思います。
書きながら、そのシーンが鮮明に頭に浮かんで泣きながら打ってました。(あほやね/笑)
少しでも皆さんに伝われば嬉しいですvv
えっと、是非是非感想お聞かせ下さいvv





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