暗い

暗い

闇の底……


抗う事もせずに、オレは闇の底に落ちて行く…。
寒くも無く、暑くも無い。光なんか全く無い虚無の世界――


そっと、瞼を閉じる。

思いだすのは、現世でオレを庇って殺された愛しき人。

もう、彼には会えないかも知れない…。

そう思うと、瞳に涙が浮かんで頬に滑り落ち、暗い闇の底に消えていく。








「サスケ、そっちに行ってはいけないよ。」


「……??!」


どこから聞こえてくるか分からない。何故か直接頭に語りかけられている、そんな感じにも感じられた。






その声は、さっきまで側に居た、愛しき人の想い人…。
名を呼ぼうとしても、何故かその声は出てはくれない。


「サスケ、…ごめんね。」


そう、寂しそうに、切なそうに呟くと、オレの腕を掴み、光の中へと導いて行く。
今まで歩けなかったはずなのに、不思議とその足は鎖が外れた様に重みが無くなり、空に浮かんでいる様にも感じられた。
光の渦の前まで連れて行くと、腕を話してオレの背中に立つ。

「さ、ここから出られるはずだよ。」


“お前は行かないのか!!”と言いたくても、やはり声は出ない。


押されるままに光の渦に入いる。そっと振り返ると、黒い前髪で隠れた表情を見る事は出来ない。
だが、とても悲しそうに微笑んでいる様な気がした。

光の渦はさらに輝きを増し、目が開けられない程になる。
真っ暗闇を光が占拠仕切った時光は消え、同時に自分の姿もその場から消え失せる。
彼の姿は見えなくなり、延ばす腕は彼の体にも触れる事も出来なくなった・・・。








「――幸村ぁッ!!!」


いつもここで目を覚ます。幼い頃から見る先の無い夢……
この夢を知る者は皆、前世の夢だと口を揃えて言う。

 
いつも悲しそうに微笑む彼の名前は幸村と言うらしい。
夢の中で毎回オレはそう呼んでいる。

まだダルイ体を起こすと頬に温いものが流れた。

…涙。


瞳に溜まっていたらしい。その手の平に溜まる滴を見つめて溜め息を漏らす。


こんな時にまでこの夢を見てしまうなんて…。隣で寝息を立てている友達を再度みてほっと胸を撫で下ろす。
夢を見て泣いているなんて知られたら、恥ずかしくて顔向け出来ない。

今日は、修学旅行で大阪に来ているから、いつもより余計に夢の力が強いのかも知れない。


「…幸村。」



誰なんだろう。
胸がもやもやしてすっきりしない。

胸の奥まで深く、深呼吸をしてベットから降りた。
時計に目をやるとまだ5時で、外は薄暗い。
目が覚めてしまい部屋でうろつくのもいいが、同じ部屋の友達を起こしてしまうかもしれないのでベランダに出て外を眺めた。

今日は5月7日、学校の修学旅行で大阪に来ている。
今日は大阪の役・夏の陣で亡くなった知将真田幸村の命日らしく、記念にそこの草原を見学に行く事になっていた。
その真田幸村と夢で会う幸村と名前が同じだから、何か胸がざわついてしょうがない。
考えを巡らせているうちに、夜は明けて空には眩しい程の光を輝かせている太陽が誇らしげに浮かんでいた。



「……。」



カラ.....



「ふわぁ…、サスケこんな朝早くに何やってんだ?」


「小太郎…、おはよう。」


静寂の中に割って入った小太郎と呼ばれる少年は、サスケのお馴染みだ。
前髪をかき上げて、まだ眠そうに大あくびをしている。


「なんか、眠れなくてさ。」


「また、あの夢か‥?」


「遠くに来て緊張してるだけだろ。」


首を傾げて、尋ねる小太郎に心配かけまいと微笑みを返した。
小太郎は昔からオレのがよく見る夢を知っていて、何かと心配かけてしまっていた。
たがら、こんな時までもこんな夢を見てると知ったらまた心配かけてしまうだろう…。


「そっか‥。冷えるといけないからまだ部屋に入ってろよ。」


「ああ…。」


素直に自分の言葉を信じてくれた小太郎にホッと胸を撫で下ろし、彼の言葉に従って部屋に入室した。



ベットに腰を降ろして後ろに体を倒す。



「…はぁ。」


柔らかいベットに体が沈み、また眠気が襲ってきて、そのまま再び深い眠りについて起床までの時間を過ごした。



今日の予定は例の真田幸村の亡くなったとされる草原へ最初に向かう事になっている。
バスに揺られながら外を見ているととても華やかな町並みばかりで正直、今の自分にはあまり見たくはない景色だった。
今日はあの夢を見てからというもの頭痛が絶えず、時間が経つにつれて痛みがますのだ。
下を向いて深く溜め息を付くと隣りに着席している小太郎が心配そうにサスケの顔を覗きこむ。


「おい、大丈夫か。顔色真っ青だぜ?」


「…何とか‥な。」


そっけなく答えたまま窓の外に目をやると眩しい程の鮮やかな緑が広がっていた。
もの凄い早やさで流れる景色は変る事がない。どれだけ広い草原か気付かされる。

ここで400年前に戦があったなんて思えない程の美しさだった。





・



・



・







草原近くの駐車場に泊めた一向は自由行動になり、サスケと小太郎は二人で草原側の川のほとりに座り込んだ。


「なぁ、どうして人は戦うんだろうな。」


「サスケ…?」


ポツリと呟いた後に川に石を投げ込んで揺れる波間に瞳を向けた。


「それはね、守りたい人がいるからだよ。」


後ろからかけられた言葉に驚いてバッと振り返ると艶やかな漆黒の髪を肩まで延ばし、女性の様な美しい顔立ちをした青年が微笑みながら立っていた。


「……。」


「う〜ん、ここも変わらないなぁ。」


そのまま瞳を空に泳がせて背伸びをしている。
この奇妙な男に目を細めてマジマジと見つめている小太郎に対して、サスケは妙な胸騒ぎを感じていた。



「…お‥前…。」


唇を震わせて一つ一つ言葉を釘って話だすと青年は警戒されていると思ったせいか、苦笑しながら両手を顔の前で振ってみせる。



「いやだな〜、そんなに警戒しないで!!僕はちょっとここの様子を見に来ただけだよ。」



あれから、400年経つんだな〜。と静かに呟いた後にサスケの顔を見て優しく微笑んだ。


「サスケ…元気そうで良かった。じゃ、邪魔したね。」


「……っ!!!」


そっとサスケの頭を撫でた後、後ろを向いて歩きだす。
思い出せない、でも覚えている肌の温もり、匂い、そして俺の名を呼ぶ声…――



「…何だったんだ、アイツ?ってサスケ!?」


小太郎に掴まれた腕を降り払って飛び出した。


「待て!!どうして、俺の名を…?」


「…覚えて無いなら、忘れていた方がいいよ。」


そう呟いた青年は寂しそうな笑顔を浮かべ、背を向けて歩き出す。

じゃあなんで、そんな寂しそうな顔がしてんだよ?


「…こんの馬鹿ぁ!じゃ、何でそんな顔で笑うんだよッ!!!」


思いっきり投げた鞄が見事に青年の後頭部にクリーンヒットした。


「…痛ったぁ!!」


「ふぅ、っばかぁ…うっ‥く。」


振り返った青年の瞳には、大きな目から涙をポロポロ流している少年が映し出される。
嗚咽を零さない様に小さな肩を震わせていた。


「‥サ、サスケ?!」


全て思い出した…、コイツの寂しい瞳を見た瞬間に全ての出来ごとが走馬灯の様に脳裏を駆け巡った。

オレが地獄の様な樹海の住人でそこからコイツが救い出してくれた事、それから真田十勇士になって幸村を守っていた時の事。
そして、大阪夏の陣で幸村がオレを守って死んだ事、オレはそのまま後追い自殺した事全てを思い出した。
夢の中でずっとオレを呼んでくれていたのはお前だったんだろ?
オレが間違った場所に行かない様に、死んでからもずっと守ってくれてたんだな…。


「ばか…、お前ってホントばかだよっ!!」


「‥サス……」


振り向いた幸村は伸ばしかけた手を引っ込めて唇を噛み絞めた。


「…ごめんね、君を苦しめて、…守れなくて‥。」


「何で勝手に謝ってんだよ!!バカ幸村ー!」


叫んだ後無我夢中で走り出し、地を蹴って幸村の胸に飛び込む。


「サスケ!?‥どうして僕の名を…――」


「全部思い出したに決まってんだろ!バカ幸村ッ!!」


鈍感なコイツに少し腹が立って思いっきり頬を抓ってやった。
コイツのマヌケな顔をもう一番見られるなんて思わなかった…。
悲しくなんか無いのに無償に涙を零れる。


「…辛い事思い出したね。本当は会っちゃいけないって分かってただけど…どうしても会いたかった。」


「この、バカ!何でさっきから謝ってばっかなんだよ!!」


言いかけた言葉を今度は腫れあがる程頬をひっぱたく。


「痛った〜!!サスケってばさっきからバカバカ酷いよぉ!」


「オレは…思い出せない方がずっと辛かった!!」


服の裾をぎゅっと掴んでさらに涙を零した。

ずっと誰かが呼んでくれていた、あの声が知りたかったんだ。


ずっとオレは待ってたんだぜ?現実でオレを見つけ出してくれるのを…。



「…サスケ。僕だって、ずっと君に思い出して欲しかった…。」


回した手に収まる程の小さな体はあれから変わってない‥。
小さな君に守られていたけれど、本当はずっと守りたかった。


君がふとと見せる優しい微笑みを…。



「もう、離さないでオレの側にずっといてくれるか‥?」

「ウン…。」


微笑んで髪を撫でると、慌てて目を反らしてポツリと呟いた。


「約束…だぞ!」


「ウン!僕はもうサスケを離さない。また幾重にも生まれ変わっても絶対に忘れない。」




忘れるものか…。




君を愛した事を忘れる事なんて出来やしない。



この甘美な甘い恋心は君のモノ、君の心は僕のモノ




「サスケ、大好き!」


「……うん///」



顔を赤らめて瞳を反らすケド、僕はしつこいぐらいその瞳を追う。


「愛してるよvv」


「……ん//オレも。」




幾千の時を超えて、再び僕たちは出会った。


戦火などない

この幸せ過ぎる世界に



世界中の人に祝福されるぐらいの恋人になろうね。



その為に僕は強くなるから、大切な君を守れるように


ずっと…









end






************+***********



はいはいはい〜、後書きでっす。
サイトにもUPしてある『曼珠沙華』の続きですね。
あの二人が死んでしまった後、二人が転生して現世で出会うと言ったストーリーです。
ん〜、どうでしょう?(笑)
前回がすごぉく暗い上にグロかったので…ι二人は幸せになったのですが。
現世でもラブラブさせたかったのですけど…力が無くなりました☆
気力がありましたら…さらに続きなんぞ書いてみたいですね。
自分世界なかりでよく話が掴めない!ってお方がいらっしゃいましたらすいません!
一応、頑張ったんです…よ。ははは…

よぉしっ、KYOもどんどん小説増やしたいですね!
ファイトォ〜!




*見て下さった皆様、有難う御座いましたっv









 













































 
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