飛べない鳥 第六話







  ドタドタ…


「おやめ下さい!サスケは今大切なお客様をとって……!」


 スパーン…



 「………ッ!?」


オレを貫こうとしていた刀は音をたてて力なく地に落ちた。
そして今度刃を突き付けられているのは…信長


 「な‥何でお前がここに……」


ゆっくりと体を起こしてはだけた着物を直しながらただ見つめる事しか出来なかった。
そして見開いた目から次々と涙が溢れ出していく。


 「待たせてごめんね、サスケ」


会いたくても、触れたくても触れなかった…愛しき人。
今自分の前に、そして助けてくれた。
これは夢ではないか?偽者ではないのかと疑ったがこの触れた肌の温もり、声は本物…。


 「今すぐにでも抱き締めてあげたいけど‥ちょっと待っててコイツを始末しないとね」


ねぇ、信長サン♪、とオレでも見た事が無い冷たい笑顔で突き付けている刀の角を上げた。


 「クッ‥何故貴様がいる!?
色子と関係があるなんて知れたら民がどう思うかな!」


刀を突き付けられたまま弱さをみせる所か勝ち誇った様に声を上げる。
何で役人の信長と面識があるんだ‥
それに民って何…?
オレの揺れる瞳に気付いたのか幸村は目を逸らして歯を噛締めて低く唸る様に言う。


 「余計な事を言うな。そんなに死を早めたいのか?」


いつも違う幸村…
何でそんなに冷たい瞳なんだ…


 「ククッ‥どうやら小僧には真実を言って居ない様だな」


知りたくないか?と喉の奥で笑う。


 「――黙れッ!!」


声を荒げた瞬間信長の頭を床に思いきり叩付け、頬を切り裂きながら顔の真横に刃を刺す。
その瞬間、後ろで控えていたのか良いタイミングで
ドアを開け放ち幸村の部下らしい男が飛び込んで来た。


 「お止め下さい!信長は重要参考人です。殺してはなりませんッ!!」


そして腕を掴んで必死に声を上げて止めている彼をチラリと見て、
ぐッと奥歯を噛締めて信長から離れてオレの前にゆっくりと歩みを進めてきた。


 「幸村‥真実って何だよ?お前一体何者なんだ…」


瞳を動かさず、じっと幸村の顔を見つめる。
だが幸村は瞳を逸し答えを渋っている様に思た。


 「オレはお前の言葉しか信じないから‥」


前にゆっくり座った幸村の頬に手を触れる。
幸村その手に自分の手を重ねて微笑んでからゆっくりと瞳を閉じた。


 「明日…もう一度ここに来るよ。その特に君に全てを話す」


だから‥もう少し待っててくれる?、とオレの体を壊さない様に強く抱き締めた。
オレもそれに答える様に背に手を回して胸に顔を埋めた。


「分かった…待ってる」


幸村は微笑んで回す腕の力を強めて、部下に連れて行けと命令を下した。
こんな人を動かせる幸村はきっと高い身分なんだろう…


 「さて、もう行かなくちゃ…」

 「え…」


また明日会えるって分かっているのに離れたくない…。
また急に幸村が居なくなってしまう気がして立ち上がった幸村の裾をぎゅと掴む。


 「…ぁ‥明日‥絶対来いよ!」

 「そんな顔しないでよ。今すぐにでも抱きたくなっちゃう」

 「――なっ///‥ん」


自分を抱き締めて離そうとしない幸村に抗議しようと
顔を上げると不意打ちで口付けされてしまった。
唇を離すと自分の唇をペロリと舐めると「ごちそうさま」と意地悪く笑う。


 「ばっ…バカァッ///早く帰れ!!」


手の甲で唇を押さえてギッと睨む。


 「じゃ、また明日‥ねv」


手をプラプラ振って足取り軽く出て行った彼の足音が消えるまで動くことが出来なかった。
まだ温もりが残る唇を撫でてそっと甘い溜め息を零す。


 「幸村…」


また‥会えた。助けに来てくれたんだ…
そしてまた会える。
早く明日になれば良いのに…
今日は早やめに休む様に言われて床に着いた。
目を瞑ると彼の姿が目に浮かぶ。
眠ろうとしても目が冴えてしまう。
…柄にもなく緊張しているんだと思うと笑えた。



   ギシ...



廊下が軋む音が静かな部屋に木霊する。
ゆっくりと体を起して障子に目をやると障子に朧気に人影が浮かんだ。


 「‥サスケ君、起きてますか?」

 「あ、うん」


すぐに言葉を返すと失礼します、とアキラがドアを開けた。


 「どうしたんだ?こんな時間に…」

 「夜分遅くにすいません。どうしても今日話しておきたくて…」


驚いて言うオレにアキラはただ微笑むだけ。
でもその笑顔が寂しそうに感じた。
それが気のせいでは無かったのだと知ったのはもう少し後になる。


 「サスケ君、私達のせいで大変な目に合わせてすいません…」


頭を深々と下げて謝るアキラの姿はいつも品位は感じられず、
申し訳なさでいっぱいだった。
そしてオレにはどうしてアキラが謝る理由が分からない。


 「私が大人しくアイツに抱かれていれば…
サスケ君はこんな目には合わなかったんです」


そう唇を噛締めてゆっくりと言った。


 「言ってる意味が分からねぇよ…」

 「‥私がアイツに一度抱かれたのは知ってますよね?」


コクリと頷くとアキラは辛そうに瞳を伏せた。
やはりとても辛い過去なのだろう。


 「アイツが去る時に言ったんです。
今度はお前を買いに来る、って…それが今日だったんですよ。
だけど、ほたるが暴れ出してアイツに反抗した
サスケ君を気に入ったのか、あなたを選んだんです…」


涙を浮かべて教えてくれた話‥全然知らなかった…。
だからアキラはあんなに怯えてて、ほたるは止めようとあんな怪我までしたのか…


 「あっ!ほたるの具合はどうなんだ?」

 「え‥ぁ…お医者様に来て頂いたので今は治療も終わって寝てますが…」

 「じゃぁ側に付いててやれよ。目を覚ました時に側に居なかったら悲しむだろ!」


立たせて背中を押すとでも…、と申し訳なさそうに眉を寄せる。

 「オレの事なら気にするなよ。アキラ達のせいじゃねぇし。
…また明日話そうぜ」


時間はたくさんあるんだから。
どんっと胸を叩いて笑うとアキラもやっと表情を緩めてぎこちなく笑った。


 「それじゃ‥また明日。夜分にすいませんでした。お休みなさい」

 「おやすみ」





 続。



落ち着きましたね。
囚われのお姫様を助けたのは王子の幸村様でしたv
つい入れたくなるほたアキ...(笑)
次回はついに最終回デスw



2005/2/12





 
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