飛べない鳥 第七話







この腕を抱いて目を瞑ったら眠れるだろうか?
そう考えてる内に深い眠りの海に落ちて行った…


 「……ぅ‥ん‥」


朝日が顔を照し、小鳥達が朝だと告げる様にさえずり合う。
いつもと変わらない朝が来た。
まだハッキリとしない頭でぼーっと障子の外に見える庭を見つめるが、
まだ寝ぼけ眼でよく物が見えないのでごしっと目を擦る。
朝日が眩しい…
同じ様で違う朝、今日は幸村に会える。
そう思うと自然に鼓動が高鳴る。


 「…馬鹿かオレは‥///」





    ――スパンッ



 「あれ‥サスケ起きてるじゃん」

 「ほたるっ!?」


いきなり障子が開けられた。
オレを見てちょっと驚いているのは傷だらけのほたる。
って、起きてたらオカシイのか?


 「お前もう動いていいのか‥?」

 「うん‥多分ね。なかなか起きてないから見に来たんだけと…」


…元気じゃん、と何だかつまらなそうに吐き出す。
コイツ本当にアキラ以外に興味ないんだな。


 「今起きるところ。お前がわざわざ来るなんて珍しいのな」


怒った様に言うがほたるには一切気持ちが伝わっていないらしく、
相変わらずぼーっとそう、とだけ返しただけだった。


 「‥まだ何か用か?」

 「‥ぁ、そうだった。幸村って人が会いに来てるよ」

 「……は?幸村が…来てる‥って何で早く言わねぇんだよ!」


布団を蹴り飛ばし着物を素早く脱ぎ捨て近くで
綺麗に畳まれた着物に腕を通して帯を締める。


 「応接間で待ってるって…」

 「どうもッ!」


それだけ言うと廊下に飛び出して走りだす。
馬鹿ほたるっ。
もっと早く言えっつーの!準備出来なかったじゃねーかよ〜!!
応接間に繋がる部屋の前で足を緩めて歩き出す。
応接間の前まで行くと足を止め、
息を整える。乱れた髪も手櫛で整えて深く息を吸って吐く。
前は幸村に会うのに緊張しなかったのに、どうして今はこんなに緊張するんだろう…。
あぁもう考えるのは止めだ!
幸村はもう目の前考えても答えが出ないなら会うだけ。


 「‥‥サスケです」

 「どうぞ」


膝を付いて片手で少し開け、両手でゆっくりと襖を開けた。


 「お待たせして申し訳ありません」


深々と頭を下げると頭の上から今までの綺麗な礼儀を全て
無駄にするかの様な下品な笑い声が降ってくる。


 「あのサスケが“申し訳ありません”だって〜!!」


応接間は大切なというか金持ちの客の為に使われる部屋なので
例え知り合いでもこの部屋で不作法な態度をする事は許されない。
幸村が不作法でも、どっちにしろ王族だと分かった幸村に
あまり大きな態度を取る事は出来ないんだけどな。
にっこりと営業スマイルで三つ指揃える。


 「幸村様、ようこそいらっしゃいました」

 「幸村様だって!何か変な気分になっちゃうvvv」


だけど…、こんな奴に敬語使うのってスッゲー損した気分だ!!


 「サスケは私の隣に座りなさい」

主人が嗜めるとサスケは主人の隣に腰を落ち着かせた。
皆の前にお茶が出されたので一口飲むと幸村が話を切りだす。


 「今日は昨日の話を続きに来たんだ」


うん、とお茶を啜ったまま頷く。


 「実はボクの父親はここの都の帝でね、先日その後ボクが継いだんだ」


子どもの様に喋った挙句に何だその微妙な説明は〜!!


 「じゃ、お前は今帝って事か!?」

 「うん」

うん、って…あっけらかんと話すが凄い事なんだぞ!
こんな色子のオレでは間近じゃ会えない遠い存在…


 「じゃ、もう会えないんだな…」

 「うん‥だから君を身請けする事にしたんだ」


ガクリと落としていた肩を上げて主人と幸村の顔を見比べると、
二人共優しく微笑んで頷いた。


 「…本当‥に?」

 「うん、約束したでしょ?」


優しくもう一度微笑み、頷いて震える手を握ってくれた。
とてもその手が温かかくて心地良い。
握られた手の甲に涙が零れた。


 「幸村…有難う‥!」

 「もうサスケの髪一本だって他の奴に触らせないから…」


強く抱き締められ、溢れた涙を舐めとった。
漆黒の瞳に見つめられると何だか歯がゆくて瞳を逸す。


 「サスケ‥」


名を呼ばれて瞳だけ上げると整った顔が
近付いてくるのが見えたのと同時に、唇を重ねた。
唇を離すと、愛しそうにオレの頬を撫でる。


 「愛してる‥」


…うん


 「オレも…」


ずっとオレには自由は無いと思ってたのに、
幸村がオレに自由を与えてくれたんだ。


そして、人を愛する事を教えてくれた。


飛べない鳥は今、翼を手に入れ、空を飛ぶ時が来たのだ。





さぁ、あの大空へ手を繋いで飛びだとう――






  終




やっと・・・『飛べない鳥』完結しました〜ww
長かったヨー。長かった割りに最後アッサリでしたが・・・。
実は続編があります。幸村&サスケその後・・・みたいのが。
『拝啓、花衣の皆様へ』は出来次第UPしていきます。
最後まで読んで下さって有難う御座いました!
感想など御座いましたら是非教えて下さいねv


2005/03/5





 
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