飛べない鳥 第二話






あれから数日後、一日休みを貰ったオレは綺麗な河が流れる辺の原っぱに寝転んで居た。
休みになるといつもここに居る、ここの河の反対側は外界だからだから早く自由になる日を夢見てここから外界を眺めているのだ。
今の時期は暖かく花も咲き乱れていて安らぐには最高だ。


本日も快晴。絶好のお昼寝日和ってか。
心地よいが風が気持ち良くてつい、うとうとし始めた所にけたたましい声が響いてくる。



「幸村様ー!幸村様どこですか〜!?」



方目だけ開けて見ると近くで誰かが走り回っていた。
ふとオレの隣の茂みには小さくなって様子を伺っている青年がいる。
明らかに変な構図。



「…アンタ何やっ‥んん――」


「――シッ」



いきなりオレの腕を掴み自分が居る方におもいっきり引くと口を塞いで木々の間に身を隠す。
誰だってこんな事されたら驚くし反射的にそれを外そうとするが、子供力では大人に敵うはずなくさらに掴む腕に力が込められた。






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しばらくその状態が続くと誰かを呼ぶ声も足音も風にさらわれて消えた。
やっと開放された口は足りない酸素を補おうと必死に呼吸を繰り返す。腕には手の痕がくっきりと残っている。



「っはぁ、はぁ…。いきなり何すんだよ!」



ギッと金色の眼で睨みつけるとその青年は申し訳なさそうに笑う。




「あははっごめんねぇ。今追われててさ」



‥ふ〜ん、何も知らない貴族のお坊ちゃまってとこか。


何故何も知らないのかと言うと、この辺に住んでいるものならオレが色子だというのがすぐ見分けられるから。
オレ達色子の首に鈴がついている紐を巻付けている。
だから分らない方がおかしい。


深く溜め息を付いた後にその青年の澄んだ瞳を覗く。



「オレの名前は猿飛サスケ。アンタは?」


「僕?僕は幸村、真田幸村だよ。宜しくv」



その脳天気さにまた深く溜め息をついていると間の抜けた顔で俺の顔をジッと見る。
このまま見つめ合っていたらどうにかなってしまいまそうな綺麗な瞳…。
…苦手だ。この曇りの無い真っ直ぐな瞳。



「‥な、何だよ」



視線がオレには重く感じて視線を外して唇を尖らせた。
何焦ってんだ‥オレ?



「あのさ、君って色子?」





――ドキ……





「‥し…知ってんならいちいち聞くなよ。ちゃんと鈴付けんだろ?」


嫌味かよ、と言う言葉は口の中で噛み潰す。
どうせ貴族の坊っちゃんにはオレ達の気持ちなんか分るものか。
人を疑うことを知らない。子供一人生きていく事が出来ないこのは恐ろしい世の事を…
オレが生きて行くのにどんなに苦労しているか……
オレが唇をかみ締めて怒りを堪えているのに気付いたか焦って訂正を入れてくる。


「ごめん‥僕ここに来たの初めてだから確信が持てなかったんだ」



うなだれて謝罪の言葉を述べる幸村の瞳は嘘を言っている様には感じなかった。
本当に知らなかったのか…
悪いこと・・したな



「悪ぃ‥、初めた来たとは思わなくて…」


「ねぇ、折角出会ったんだしこの町を案内してくれない?」



っておい、オレの話し聞いてねぇのかよッ!
素直に謝った自分が馬鹿みたいで何だか段々頬が紅潮してきた。
幸村はニコニコこいつもまた馬鹿みたく笑ってやがる。



「…しょうがねぇな。ちょっとだけだからな」



はぁ、落ち込んでると思って心配して損したぜ…
プイっと顔を背けて立ち上がる。



「オレだって暇じゃねーんだからさっさっと行くぜ」



スタスタと先に歩いていくオレの後ろから弱々しい声を上げてついてくる。



「待ってよ〜サスケ君ー!!」



ピタッと足を止めると幸村もそれにつられて歩みを止めると、オレは振り返らないまま蚊が鳴く様な声で呟く。



「……ぃぃ」


「え?」


「…呼び捨てで‥いい///」


「………ッ」



何で何も言わないんだよ!?一人で恥ずかしいじゃねーか…
こっそり髪の影から様子を伺うと瞳を恐ろしい程に輝かせて飛び込んでくるのが見えた。
逃げる暇も無く、子供のオレには幸村を支える事が出来ずに後ろのにひっくり返る。



「バッ‥バカ!危ねぇだろ!!」



痛みが走る背中を起こしておもいっきり怒鳴りつけるが本人は全く気にした様子は無く無邪気に笑っている。



「僕ね、今まで友達が居なかったからそう言って貰えて凄く嬉しいんだ!」


「幸村…」



だからそんなに喜んでたのか…。オレは親には恵まれてないが友人には恵まれていたから寂しく感じてなかった。

コイツはどうなんだろう…?




「幸村様、見つけましたよ!」


「――才蔵ッ!!!」



土手の上には全身黒い服を纏う男が仁王立ちしてこちらを睨み付けていた。
さっき幸村を探し回っていた男だった。
…やっぱり、どこかの貴族のお坊ちゃんか?



「帰りましょう。お父上が幸村様の事を心配されております」



何だ‥やっぱり家族に恵まれてんじゃん。
チラリと幸村に目線を向けると唇を噛み締めて部下を睨み付けている。
その瞳は見た事ないぐらい冷たく、辛そうな声で声を荒げた。



「父上が心配なのは、後継者としてのボクだろ!!もう構うな!」



すくっといきなり立ち上がってオレの腕を掴んで回れ右。
叢の中を走り抜けて行く。
後ろを振り向くとさっきの男が焦って追いかけてくるが藪に覆われて見えなくなっていった。



「あ、おぃ!どこ行くんだよ!?」


「誰もいないとこッ!」



振り返る事なくそう一言だけ告げる。
誰も……って‥?
段々走る速さは落ちて来て今では歩けるぐらいの速さだ。
幸村は一歩一歩進む事に小さく‥言葉を漏らしていく。



「小さい頃から遊ぶ時間さえない程に勉強・武術を叩き込まれ、父は僕の事なんか構ってくれた事なんかない」



コイツは…親にも友達にも恵まれてなかったのか……?
それなのに、どうしてそんなに明るく振る舞う事が出来るのだろうか…?



「なのに今になって後を継げだなんて…調子良過ぎると思わない?」


「あの‥よ、辛い時は無理して笑わなくていいんだぜ?」


「……っ」



オレの言葉に驚いたのか、幸村の顔からは微笑みが消えて目を見開いて唖然としている。



「‥君は凄いね。君の方が大変なのに他人を気遣ってあげるなんて」



今度は無理してない様な柔らかな笑顔で大丈夫だから心配しないでと立ち上がってオレに手を差し出す。



「‥なんか合ったら何でも話せよ?友達‥なんだから///」



その差し出された手を握って立ち上がると、幸村は嬉しそうな顔で大きく頷いた。
それから俺たちは毎日最初で会ったあの土手で会う事になった。








続。







 
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